本の存在を知ったあくる日、読みました。
オアゾの丸善は、椅子完備で最高ですな。
奥野修司 『心にナイフをしのばせて』 文藝春秋
簡単なあらすじ。
・1969年春、横浜の高校で、男子生徒が、同級生に首を切り落とされ殺害された(
事件の概要)。
・加害者の同級生は少年院へ。その後、社会復帰し、弁護士となったそう。
・被害者の母は事件後2年間をほとんど眠りながら暮らす(「現実に向き合いたくなかったのだろう」というのが娘さんの弁)。
自殺未遂を図ったこともあった。
・被害者の妹は、自分より出来がよい兄が死んだことに罪悪感を抱き、「自分が死ねばよかった」と思いながら成長。
リストカットをしていた時期もあった。
・被害者の家族は加害者の現在をまったく知らなかった。
・遺族の話では、加害者は被害者に未だ賠償金を支払っていないらしい。
事件がどれほど人の人生に影響を与えるのか、
ということを知るためには、読んでおいたほうがよい本かもしれません。
キャッチコピーでは、加害者と遺族の現在の状況の差に重点が置かれているように思えますが、
私は、遺族がどのように苦しみ、どのようにそれに耐えたかということを知るための本という印象を受けました。
正直、ここまで被害者側がほったらかしにされているとは思いませんでした。
現在、どれほど被害者側のケアが行われているかは知りませんが、
この本に書かれているときからそう変わっていないなら、もっと充実させるべきですね。
話は逸れますが。
既に、あるところでは、本の記述をもとにした特定作業が行われているようで。
このご時世、こういうノンフィクションを出すということにも色々微妙な問題がありますね。
ご質問をいただいたので、追記。
750万円の損害賠償が認められたのですが、実際に支払われたのは40万。
加害少年の御家族が事件をもとにヤクザ等に恐喝され財産を失ったということで支払が中断されたそう。
御遺族は加害少年が弁護士になったことを最近になるまでご存じなかったそうなのですが、
御遺族が経営なさっていた喫茶店の経営状況が悪化した際、賠償金の残額の支払を求めたところ、
「少しぐらいなら貸すよ、印鑑証明と印鑑を用意してくれ、五十万くらいなら準備できる。今は忙しいから一週間後に店に持っていくよ」
」と言われたとか。
あくまで被害者側を取材した本に書かれていたことであって、真実がどうであるかは明らかではありません。
ただ、これを真実だと思った一部の読者が義憤にかられる、ということもあるんでしょう。
こういうのは、お金の問題であって、お金の問題でないというか、
「賠償金を支払わない→謝罪の意思がない」という捉え方になってしまいがちですしね。